トラックドライバーの皆さんは、災害時にどのようにして私たちの元へ物資を届けてくれるのでしょうか。

災害時はとくに、物流が止まれば、生命線が止まってしまいます。

運送業界はそうなってしまわないよう、国や県と協力し合い迅速に必要な物資を被災地などに届けてくれるのです。

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緊急・救援輸送とは

被災地の援助や復興のための輸送を「緊急・救援輸送」といい、次のような輸送を行います。

  • 被災者の応急生活を確保するための救援物資の輸送(食料品、飲料水、衣料、日用品、熱源、医薬品、仮設住宅など)。
  • 被災地の後片付けのための物資輸送。
  • 被災地の都市機能回復のための資機材などの輸送(道路・鉄道・河川・水道・ガス・電力・通信などの復旧資材、車両、燃料など)。

トラック運送事業者の役割

被災後はさまざまな物資を、短期間に、大量に輸送しなければなりません。

トラック運送事業者には、これら輸送の担い手として大きな役割が期待されています。

  • 緊急・救援輸送の要請機関

緊急・救援輸送の要請は、都道府県等から都道府県トラック協会に要請され、それを受けて出動することになります。

  • 要請後は迅速な対応を

都道府県等から都道府県トラック協会への輸送要請は、深夜や早朝に発せられる場合もあり、出動までの時間が短い場合もあります。そのため要請後は迅速な対応が必要となります。

  • 緊急・救援輸送「出動車両」の優先事項

緊急・救援輸送を行う車両は、一刻も早く目的地に到着し、業務を果たすことが求められるため、次のような優先事項が与えられています。

緊急交通路の通行が可能

緊急・救援輸送「出動車両」には、一般車両の通行が禁止されている緊急交通路の通行許可や、(緊急交通路が有料の場合は)通行料金が無料となる場合もあります。

その際、一般車両と区別するため、緊急通行車両を証明する標章(ステッカー)と証明書が必要となります。

緊急通行車両の標章(ステッカー)

緊急通行車両を証明する「緊急通行車両標章」および「緊急通行車両確認証明書」は、都道府県知事か公安委員会が交付します。

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他地域から被災地に向けての輸送

緊急・救援輸送は、輸送範囲によって「他地域から被災地に向けての輸送(物資調達の輸送)」と「被災地内での配送(物資配送の輸送)」に大別されます。

  • 出動にあたっての準備

他地域から被災地までの輸送は、長距離輸送となる場合があり、被災地周辺の交通渋滞により長時間にわたる輸送となる可能性もあります。そのため次のような準備が必要です。

[出動車両について]

  • 燃料は満タンに

被災地周辺では、燃料の確保が困難な場合もあります。満タンにするなど事前の対応が必要です。

  • 車両の整備状況をチェック

出動車両が、車両故障を起こしたら十分な役割が果たせません。

日頃から整備状況には気をつけておきましょう。

[ドライバーの携帯品について]

出動時は、いつ帰れるか分からないという心構えで、次のものを用意して出動しましょう。

作業着(ヘルメット、軍手)、作業靴、下着、懐中電灯、緊急医薬品、携帯電話などの通信手段、現金、携帯食料品、飲料など

  • 集合場所での注意事項

[物資の積み込み、輸送内容の確認]

集合場所(都道府県の備蓄倉庫や庁舎等)では、都道府県やトラック協会の職員の指示を受け、物資を迅速に積み込み、輸送内容についても確認しましょう。

[緊急・救援輸送ステッカー、横断幕の装着]

出動車両には「緊急・救援輸送車両であることを識別する」ステッカーと証明書、都道府県トラック協会独自の横断幕などが支給されます。トラック前面もしくは

横側(荷台部)に、正しく装着しましょう。

  • 輸送途中の注意事項

[輸送隊を編成する場合]

長距離輸送で、輸送隊を編成して出動する場合は、途中で集合するサービスエリアなどを決めて走行し、はぐれないようにしましょう。

[パトカーが先導する場合]

パトカーや白バイの先導がある場合は、その指示に従いましょう。

[輸送ルートの確認]

災害発生の初期段階では、緊急交通路が刻々と変化することもあります。被災地に近くなったら、輸送ルートを確認することも必要です。

[危険物を輸送する場合]

燃料など危険物を輸送する場合は、横転や衝突による惨事を引き起こさないように十分注意しましょう(消火器の常備を忘れずに)。

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  • 被災地に着いたら

[物資の取り降ろし]

現地の責任者の指示に従い、迅速に荷物を取り降ろします。また、どこから運ばれてきた、どんな物資であるかを明確に伝えます。

[帰路について]

物資を降ろしたら、すみやかに被災地を離れます。なるべく渋滞を避ける走行ルートをとり、無理をせず宿泊や仮眠を取りながら事故のないよう帰路につきましょう。

自然災害は防ぐことはできません。

だからこそ、災害が起こった際にはひとりでも多くの人が安全に過ごせるよう、迅速に行動することが大切です。

運送業界及びトラックドライバーの皆さんの協力のおかげで、被災地などへ物資が届けられているのです。

引用参考 改訂版 防災手帳~災害に備えて~